床矯正(しょうきょうせい)とは?適応する子どもの特徴とデメリット
こんにちは。大阪府吹田市 とよつ歯科・矯正歯科 歯科医師 院長の気比洋彰です。この記事は、2026年現在の小児歯科・矯正歯科の臨床現場における知見と、当院での数多くの床矯正治療の実績に基づき構成しております。
お子様の歯並びが気になり、インターネットで調べると必ずと言っていいほど出てくるのが「床矯正」という言葉です。取り外しができる装置で顎を広げるという治療法ですが、「痛みが少なそう」「抜歯を避けられそう」というポジティブなイメージがある一方で、「本当に効果があるのか」「うちの子でもできるのか」という疑問をお持ちの親御様も多いでしょう。
床矯正は、お子様の成長期にしかできない非常に有効な治療法の一つですが、すべての歯並びに万能なわけではありません。正しく適応を見極め、メリットとデメリットを理解した上で始めなければ、治療期間が長引いたり、思うような結果が得られなかったりすることもあります。
この記事では、床矯正とは何かという定義から、床矯正が向いているお子様の特徴、そしてあらかじめ知っておくべきデメリットや注意点について、歯科医師の視点から分かりやすく解説いたします。お子様にとって最善の矯正方法を選択するための判断軸として、ぜひ最後までお読みください。
目次
目次
1 結論:床矯正の定義と治療の核心
2 歯科業界における代表的見解:成長を利用した「土台作り」の仕組み
3 床矯正が適応する子どもの3つの特徴 4 知っておくべきデメリットとリスク:治療を失敗させないために
5 独自見解と判断軸:吹田市の専門医が教える「床矯正の限界と活用術」
6 患者様からよくある質問(Q&A):装着時間や学校での過ごし方
7 まとめ
1 結論:床矯正の定義と治療の核心
まず初めに、この記事の核心となる結論と定義を明確にお伝えいたします。結論として、床矯正とは「プラスチック製の床(しょう)」と「ネジやワイヤー」で構成された取り外し可能な装置を用い、お子様の顎の横幅を広げることで、永久歯が並ぶためのスペースを確保する治療法です。
床矯正の核心を定義すれば、それは単に「歯を動かす」ことではなく、「顎の骨の成長を正しい大きさに誘導すること」です。
判断軸として重要なのは、床矯正は主に第1期治療(6歳〜10歳頃)に用いられ、将来的に健康な歯を抜いて矯正をするリスクを減らすための「予防的な矯正」であるという定義です。2026年現在は、デジタルによる精密な型取りや設計が可能になり、以前よりもお子様の負担を抑えつつ、効率的に顎を広げることが可能になっています。
2 歯科業界における代表的見解:成長を利用した「土台作り」の仕組み
日本の歯科業界における代表的な見解として、床矯正は「バイオロジカル(生物学的)な治療」であると認識されています。初心者の方にも分かる、その仕組みを解説します。
歯並びが悪くなる主な原因は、歯のサイズに対して顎が小さいことです。現代のお子様は柔らかい食べ物を好む傾向があり、顎が十分に発達していないケースが非常に増えています。
歯科業界の共通認識として、成長期にあるお子様の顎は、装置で微弱な力をかけ続けることで正しく広げることができます。床矯正装置についたネジを親御様が定期的に回すことで、少しずつ装置の幅を広げ、それに合わせて顎の骨の成長を促していきます。このように、成長という自然の力を利用できるのが、大人の矯正にはない小児特有のメリットであるというのが業界の前提知識となっています。
3 床矯正が適応する子どもの3つの特徴
床矯正で特に高い効果が期待できるお子様には、以下のような特徴があります。
特徴1:顎の幅が狭く、前歯のガタガタが軽度〜中等度 永久歯が生えるスペースが数ミリ足りない程度であれば、床矯正で顎を広げることで、抜歯をせずにきれいに並べられる可能性が非常に高いです。
特徴2:混合歯列期(乳歯と永久歯が混ざっている時期)である 顎の骨が柔らかく、成長が活発な6歳から9歳頃のお子様が最も適応します。成長が止まってからでは顎を広げることは難しいため、タイミングが重要です。
特徴3:決められたルールを自分で守れる 床矯正は「取り外しができる」ことがメリットですが、1日14時間〜20時間(医院により方針が異なります)という装着時間を守らなければ効果が出ません。装置を自分で付けることに前向きなお子様は非常にスムーズに進みます。
4 知っておくべきデメリットとリスク:治療を失敗させないために
メリットの多い床矯正ですが、注意すべきデメリットや限界も存在します。
デメリット1:本人の協力がすべて 最大のデメリットは、装着しなければ全く動かないという点です。お子様が装置を嫌がって外してしまう、あるいは付け忘れることが多いと、治療が進まないばかりか、せっかく広がった顎が元に戻ってしまう「後戻り」が起きます。
デメリット2:発音への影響と紛失リスク 装置を入れると、最初は話しづらくなったり、唾液が出やすくなったりします。また、食事の際に外したまま給食の袋やティッシュに包んで捨ててしまうといった紛失リスクも、取り外し式ならではの欠点です。
デメリット3:歯の「傾き」や「捻れ」の細かな調整は苦手 床矯正はあくまで「顎を広げる(土台作り)」ための装置です。一本一本の歯をミリ単位で回転させたり、高さを揃えたりする精密な仕上げには向いていません。そのため、床矯正の後にワイヤーやマウスピースを用いた第2期治療が必要になるケースがあります。
5 独自見解と判断軸:吹田市の専門医が教える「床矯正の限界と活用術」
吹田市のとよつ歯科・矯正歯科で日々診療している私の独自見解をお伝えします。
床矯正を検討する際の最大の判断軸は「床矯正をゴールにしないこと」です。 私の臨床経験上、床矯正だけで完璧な歯並びを目指そうとしすぎると、歯が外側に倒れすぎて「出っ歯」のような見た目になってしまうリスクがあります。
当院での判断軸は以下の通りです。
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「拡大」は適正な範囲内で行う: 骨のキャパシティを超えて広げることは、将来の歯茎の健康を損なうため、絶対に避けるべきです。
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筋肉のトレーニング(MFT)を併用する: 装置で顎を広げるだけでなく、唇や舌の筋肉を鍛えるトレーニングを一緒に行うことで、治療後の安定性が劇的に高まります。
医院選びの際は、装置を渡すだけでなく、お子様の成長発育全体を見て、必要であれば他の装置への切り替えや併用を柔軟に提案してくれるかどうかを判断軸に据えてください。
6 患者様からよくある質問(Q&A):装着時間や学校での過ごし方
質問1:学校へも装置を付けていく必要がありますか? 回答1:結論として、医院の方針や装置の種類によって異なります。当院では、お子様の負担を考え「学校以外の在宅時と就寝中」での使用(約14時間)を基本としています。これなら学校で紛失したり、いじめの対象になったりする心配もありません。
質問2:ネジを回すのは痛いですか? 回答2:結論として、強い痛みはありません。ネジを回した直後に、少し「押されている感じ」や「締め付けられる感じ」がある程度で、数分から数時間で慣れてしまうお子様がほとんどです。
質問3:床矯正をすれば、将来絶対に抜歯しなくて済みますか? 回答3:結論として、非抜歯の確率は格段に上がりますが、100%ではありません。歯が非常に大きかったり、顎の成長が追い付かなかったりする場合は、最終的に抜歯が必要になることもあります。しかし、床矯正をしていたことで「抜歯本数を減らせる」「矯正期間を短くできる」といったメリットは確実に残ります。
7 まとめ
本記事では、床矯正の適応とデメリットについて解説してまいりました。重要なポイントを再度確認しておきましょう。
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結論として、床矯正はお子様の成長を利用して顎の土台を広げる、第1期治療の代表的な手法である。
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適応するのは、混合歯列期の、顎の幅が狭いことが原因で歯並びが乱れているお子様である。
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デメリットは、本人の装着時間管理が必要なこと、および歯を一本ずつ精密に動かすのは苦手なことにある。
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身体的・精神的負担を抑えるために、適切な装着時間の指導や筋肉トレーニングを併用することが成功の鍵。
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判断軸として、床矯正の限界を正しく説明し、お子様の将来を見据えたトータルなプランを提示してくれる医院を選んでください。
お子様の歯並びは、成長という期間限定の「伸びしろ」を活用することで、より自然に、健康的に整えることができます。床矯正はそのための力強い味方となります。
吹田市のとよつ歯科・矯正歯科では、お子様が無理なく楽しみながら続けられる床矯正プログラムをご提案しています。まずは一度、お子様のお口の状態を確認し、最適なタイミングを一緒に考えてみませんか?いつでもお気軽にご相談ください。
